rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第12章 rain of fondnessⅤ-3
「・・・・」
ただ絶えまなく、その小さな舌を口腔から出して、ナッシュへの施しのために心を研ぎ澄ませる。
集中していようとも、ぐずぐずと気持ちを錯綜させたくなるのは、解りきっていたひとつの事実がそこにあるからだ。
素直に認めたくないだけ・・・不安が、期待と渇望の裏返しだということを、無論彼女は理解していた。
「ん・・・」
時々ナッシュが漏らす吐息は小さく、名無しはすぐに、その息をもっと急かさせたいとさえ同時に思っていた。
彼を自ずと切望していた何よりの証拠だろう。
単純に聞きたいという意味もあったし、耳にすることで、その都度自分が昂りを覚えられたという私欲も込められていたのだ。
男女の差も勿論ある、男のナッシュが簡単に嬌声を出すこともなかったけれど、それでも善がる姿が見たいのだと、自然と心を動かされる。
ナッシュも同じ気持ちを抱えて自分の身体をいつも愛でていたのだろうかと思うと、名無しは嬉しく感じずにはおられず、彼の身体に沢山のキスを降らせた。
簡単にてのひらを返し、欲望に忠実に恋慕を拗らせた、実にいやらしいキスを――。