rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第11章 rain of fondnessⅤ-2
か弱い声音が、静かにナッシュの耳に届く。
ただの吐息と、軽い喘ぎを漏らしていた時とは明らかに違った、語気の掠れた名無しのそれ。
ナッシュはその様子の変化に疑問を感じ一度身を起こして膝立つと、続いて起き上がってきた彼女の両腕に自由を奪われ、思わず目を見開いた。
名無しはいつもそうだ。
ベッドの上で自分が欲しいものが手に入らなければ、物欲しそうに唇を噛み、じれったく身体を捩じらせる。
ナッシュが意地悪く突き放しながら、喋れる口があるのだ・・・その願いを並べさせるのが大体通例と言えばそうだった。
ただこのときナッシュが驚いたのは、懇願の後、彼女が自らの意思で、必死になって綴った言葉があったこと。
その瞬間、自分は名無しに、ねだるという行為を強いり、それに満足していたことに気付かされたのだ。
ナッシュは自分自身も、まだ彼女に求め得るものがあることを悟り、心底口元を歪ませて嘲笑ってみせた。
「・・・ハッ・・、――言ったな?」
「――!!・・・、待っ・・違う・・・私はただ・・・!ん・・ッ」