rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第2章 rain of fondness2
「・・・・・」
戻ったことは連絡していない。
自分からメールをすることが、どうしても癪だったから。
名無しは急ぎ足で駆け付けたその街の一角は公園の中、ひたすらに人の群れが出来ていた場所を視界に捉えると、胸を逸らせて更に其処へと近付いた。
身体が一瞬強張ったのは、この街がすべての始まりだった所為だ。
あの日あのとき、此処さえ歩かなければ出会うこともなかった。
ずるずると、どろどろとした淫れた関係を続けることもなかった。
それでも名無しは、自分で此処に来ることを今は選んでいた。
ナッシュに会いたいのだと、自らの意思で――。
「ッ・・・!」
広大な敷地と表現できるほどの公園、その中の通りに面した場所に、稼働率の高いバスケットコートがあることはなんとなく把握していた。
その稼働率ゆえ、毎日のように、いくつものチームがそのコートで試合をしていたことも・・・。
そこに自分が訪れることになるなど、心底思ってもみなかった。
名無しは到着して初めて観客の多さを目の当たりにし、この国の人々が、いかにその競技を好んでいたかを改めて知る。
時折テレビで見るようなギャラリーとも違った、例えるなら多少、品の無い連中も混ざりつつ。
それでも全員が同じ方向を見据え、そこに歓声が沸き起こっている様子は、名無しから見れば充分に鳥肌が立つ光景だった。
「・・・・ッ・・・」
名無しは軽く人を掻き分け、コートにより近い場所へと来ると、そこで今まさにプレイ中であるふたつのチームの名を、スコアボードとその目で確かめた。
数あるチーム、今日がその日に当たればと願ったのはもちろんのこと・・・。
一瞬で見つけられたのは、誰とも間違わない自信があった、眩しいばかりの存在だったから。
名無しの大きな瞳に映ったのは、ゴールめがけ弧を描くようにボールを手放し、きらきらと汗を散らすナッシュの駆ける姿だった。