rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第2章 rain of fondness2
「・・・・・」
思い出すこともない。
思い出さなかったのは本当だ。
なんて、どちらも意地を張った結果の、こんな酷い洒落が何処にあろうものか。
これでは頭の片隅で、つね確かに本当はナッシュを求めていたことを、旅行のあいだだけはせめて認めたくなかったのだと逃避しているようなものだ。
日程を終え帰って来た途端に肯定した想いは、会いたいと願う、紛れもない純心。
その果てに押し寄せるナッシュへの恋慕、それが今抱く寂寥感に繋がっていたことを、名無しは自覚せざるを得なかった。
「・・・、会いたいよ・・、ナッシュ・・――」
ぽろりと漏らす、まことなる本心。
疼く身体は人知れず彼を求める。
家に戻った名無しが荷物を置いてすぐ、そこからなんとなく、ナッシュとの馴染みある街まで向かおうと決めたのは、まさに帰宅直後のことだった。
彼女がまず向かったのは、ナッシュと初めて出会った場所に隣接する、大きな公園だった。