rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第9章 rain of fondnessⅣ
「これのことか?」
「っ・・・ん、・・私も、好きだから・・・これ。こんなことってあるんだなと思って・・。――おいしい」
「!・・・そうかよ・・」
「うん・・・」
名無しは胸躍らせながら、此処へ来て並行して、妙な緊張感もあわせて持っていた。
けれどテーブルに置かれたドリンクと、出来上がって運ばれてきた料理を見て、同時にその緊張が解されている自覚も抱いていた。
ナッシュが嬉しそうに、偶然にも自身と共通だった好物の一切れを手にし、ライムの香る炭酸水を口に含んだ瞬間、自分はまた、彼のこんな一面も見たかったのだなと痛感したのだ。
そう思うということは、彼の隣に常に居ることを・・・そこを定位置として、ずっと傍にいたいということを表しているようなもの。
出会いと、重ねてきた過去を思い返せば返すほどに、目の前に居た今のナッシュが名無しにはとても眩しく、そして愛しく思えた。
ひと目こんな彼の姿を見られたのならば、たとえばいつ裏切られたってもう構わない・・・そう感じられるほどに――。
rain of fondnessⅣ