rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第9章 rain of fondnessⅣ
「・・・で?おまえはどうなんだ」
「え・・?」
「二週間。たっぷり遊んで来たんじゃねえのかよ・・・大体どこに・・」
「!ああ・・・、うん・・――」
名無しは自分の唯一持ってきていた小さな鞄をナッシュから受け取ると、それを手に持ち、退室する彼の後ろについた。
陰に隠れたのは、なんとなく施設の周りに、まだナッシュの知り合いやチームメイトがうろついているのではないかと懸念したからだ。
もっとも、館にあったメンバーの荷物のことに触れても彼は一切動じなかったゆえ、メンバーとは逐一馴合っているわけではないということも、よく分かりはしたのだが。
それに、やはり余程とみて、チームの女性関係は派手なのだろう。
少し前まで、その関係の輪の中にナッシュも入っていたのだなと思うと、名無しはほんの少しだけ胸をざわつかせた。
それだけ女性に対して言動や金に糸目をつけなかったにもかかわらず、他の異性を切ってでも、今では自分のことだけを繋ぎ止めていたいと強く感じているらしい彼の気持ちは、いつになったら耳にすることが出来るのだろう・・・。
ナッシュの想いなど既に、沢山のキスと、あの愛撫とセックスで、もう存分に伝えられている筈だけれど。
結局聞きたいというのが、自分もまた、女なのだということを痛感させられる。
今彼女にできることは、ナッシュを信じることだけだった。
「ああ・・そういやおまえ、・・メシは?」
「っ・・・え?」
「~・・・いちいち聞き返すんじゃねえよ・・・聞こえてんだろ。メシだ」
「あ・・ッ・・・、おなかは・・空いてるけど・・でも・・・」
「・・・食ってから帰るか」
「!え・・・?!」