rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第9章 rain of fondnessⅣ
「荷物・・・」
「あ・・?」
「っ・・・みんなの。カバンも・・・靴もあったようだったけど・・」
「!・・・そんなもん、回収できねえところで誰一人困らねえよ・・まあせいぜい、オレが最初に連絡したとおり、どいつもこいつも女の家に行っただろうよ」
「、・・そっか・・」
身体に纏わりついた体液を洗い流したにもかかわらず、再び袖を通すことになった汗の匂いのする服を見て、名無しは一度ふっと笑った。
個室の外の更衣室で、最低でも翌朝まではこれを着るのか・・・そう考えただけで何だか面白おかしかったのだ。
こんなことならば、旅行の荷物を自宅に置いて来るんじゃなかった。
そう後悔したけれど、どのみちその荷物の中にも、もう替えの服は入っていなかった。
そんなことにさえ気付けない程、この数時間のあいだに名無しに起きていたことは決して小さくなかったし、何より彼女の脳内は今、ナッシュのことでいっぱいだった。
それに、そこまで悪い気もしなかったのは、自分の服にナッシュの匂いが染みついていたからだろう。
こんなに嬉しいことはない・・・などと、一人の空間ゆえ軽率に零したのは、紅潮した頬にささやかな微笑みだった。