rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第8章 rain of fondnessⅢ-2
昇りつめて、脈が薄れて、引き戻されるとうとう現実。
頭の中に咲き乱れた花が散って、その現実と向き合おうと、決心がついたと思った矢先のことだった。
この上なく淫らで、耳にしたことのないような水音がずぷずぷと・・・まるでそんな形容が響き、その音に名無しが耳を傾けていると、ナッシュは再び腰を荒らげに突き動かした。
「ふ・・・、・・っ」
考えられなかった。
陰部はふたつの体液にまみれ、少し遡れば、付着していたナッシュの唾液などとうに腿を伝い終えたことだろう。
白濁と半透明が混ざり濁る様はいやらしいと表現する以外もなく、聞こえる淫音に名無しは戸惑うばかりだった。
現実に向き合う決心がついたなど嘘だ。
昂り続けているのは、相手だけではないことを思い知らされる――。
「・・・・ほら・・どうした?ん・・・?」
「ッ・・・ん・・」
「名無し」
「・・ッ――離せ・・い・・・、・・・離したく、まだ・・・ナッシュ・・もっと―――」
「―――・・・名無し・・」
触れた身体の熱は、ナッシュも名無しも、あたたかいなんて言葉だけで喩えられたものではなかった。
二度の射精を終えても静まらない彼の陽物は、まるで自分から、彼女の内部に溶け込み続けることを選択しているかのような・・。
そうさせられていたのはおまえの所為だと、主張を失わない猛りに肉襞を纏わりつかせる名無しを、上から不敵に笑ってナッシュは攻め立てる。
その微笑の中に混ざっていたナッシュの真剣な眼差しは、彼女の本音を口にさせるには十分すぎるほどの強かさを帯びていた。
まだ繋がっていられる。
キスもして、抱き締め合える。
その本心を・・・離さないでと途切れ途切れに紡いだ名無しの言葉は、ナッシュにとって、彼女に好きの二文字を囁かれることよりもとても愛しく、そして大切に思えた。
rain of fondnessⅢ