rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第45章 undress yourself.
「気にするかよ……ほら、顔上げろ…」
「ん……」
コートの立地が自宅に近かったがゆえに選択した今日の予定ではあったものの、いつものようにナッシュの部屋に行けばよかったのかもしれないと一度考えると、
なかなかそこから前向きな思考に切り替えるのに名無しは時間がかかっていた。
が、気が付けば部屋の前まで来ていたあたり、相変わらずまっすぐで可愛い存在であると、ナッシュは胸のうち想いを秘めるだけだった。
「ただいま……!!ん……」
「ちゅ……おまえの部屋に入ったら…」
「っ…すぐするって……決めてたの?それって、キ……」
やがてそうこうしているうちに着いた部屋で、名無しは玄関を開けた。
先にナッシュに入ってもらおうと視線を送ると、ナッシュはそれを避け、結局名無しが先に帰宅し彼を招き入れる。
ナッシュが続いて玄関に片足を踏み入れると、そこには花の香りがふわりと漂っており、いかにも女性の部屋らしさが滲み出ていることを彼に身を以って感じさせていた。
「!……ハッ…そんなにせっかちに見えるか?シャワーくらい一緒に浴びさせろよ…ん?」
扉が閉まった瞬間、名無しを抱き寄せ、顔に触れて自身が少ししゃがみ込みキスをする。
ナッシュは名無しの唇に乗っていたリップが少し自分に付着した感触を覚えたけれど、その香料にさえ彼女を感じていたゆえ、気にすることもなく軽いキスを続けた。
もしや此処ですぐに抱かれてしまうのではと焦る名無しに、笑いを交えつつ返答するのも、もうよくある話だった。