rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第41章 tryst in a...
「!……フッ…なにマジメに待ってやがる。勝手に遊びに行っててよかったんだぜ」
「む…っ、考えたけど……でもいいの。移動で疲れたし、休んでた…。このベッド、ふかふかできもちいいし」
無機質な電子音がささやかに響いたことを名無しが聞き逃さなかったのは、加湿器が小さく唸っていても、ナッシュの帰りに意識を集中させていたからだろう。
扉が開いて、彼が部屋の奥へと近付いてくるタイミングと同時に、ベッドから起き上がる。
名無しは両手をマットにつけ、ナッシュに小さく微笑んでみせた。
「そうかよ…移動のあとワンゲームやってきた相手によく言えたもんだな。ハハッ」
「…体力が違うじゃない……もう…、……ナッシュ?」
「ああ……もう少しいい子で待ってろ。これからバカが迎えに来やがる……ハァ…」
「?!」
ホテルの一室で留守番をしていた名無しにとって、ナッシュを見るのは数時間ぶりだった。
ここまで来るのに移動は別、大げさではあったけれど、久々に顔をあわすことができ素直に喜ぶ。
ナッシュは少し髪を乱しており、手櫛でアバウトに型を整えていた。
スタイリッシュさに少し欠けた姿を目にしてしまうと、部屋まで急いでくれたのかもしれないと思わず妄想が膨らんでしまい、けれど数秒後にはそんなわけないと我に返る。
そんな彼はというと、上の服を脱ぎ捨てソファに投げつけながら、珍しく寂寥感を漂わせた声音を喉から吐き、名無しに一言詫びた。