rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第39章 I'm full.
「……ナッシュ?」
「…ん……」
暗めのシーツとケットのなかに映える金色の髪。
ばさばさと、睡眠をとっているに相応して乱れているのがほんの少し見える。
鞄を置いてベッドに近付いた名無しは、ナッシュの寝顔を久々に目にした気がして、ひとり心を躍らせた。
「……起きた気配もない…、!ッ……」
寝室に香るフレグランスがふわふわと宙を漂う。
彼の部屋に来たのだなということを、常々実感させられる。
何もしていない時は爽やかに感じるそれだ。
なのにいざシーンが変われば、一気にその香りはいやらしく変貌し、甘く名無しをいざなってゆく。
「……」
名無しは鼻で息を吸いながら、今抱く気持ちがまず、前者でよかったと思っていた。
が、僅かな時間で早朝から夜、共に眠る瞬間の気分を味わわされた気がして、動揺に胸をざわつかせる。
爽やかでありながら妖しく、甘やかに香る二面性を持った香りは、思えばナッシュが付けている香水ともよく似ていた。
「ナッシュ……」
寝返りを打ったナッシュの寝顔は、いつもの物静かで、愛らしいと思えるそれに変わりはなかった。
けれど名無しが視線をずらすと、ケットからはみ出していたのは彼の生足だ。
引き締まった筋肉でいて、緊張状態の解かれた自然体の寝相。
彼は睡眠をとるなかで、無意識にどこか色気を漂わせながら、名無しを強く煽っていた。