rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第36章 fondness afterⅢ
「おかしい、か・・・それでいい・・。どうせオレもだろうからな」
「!・・・ナ・・、ん・・」
「ん・・・。――バカが・・・付けた意味なんてこれっぽっちもねえ・・」
わざと停滞させた熱が沸々と膨張してゆく。
押し倒された反動でふわりと舞うナッシュの匂いが、名無しが抑えていた、想いの速度を一気に上げる。
濡れた毛先が顔にかかり、見つめ合えば、自然と唇が重なった。
無理やりにというよりはゆるやかに名無しのそれが割られて、ナッシュはその中にじっとりと舌を挿入した。
「ん・・ッ」
そこに夜を匂わせる激しさはなかった。
が、絡み合う度に鳴る水音が、自ずと卑猥な空気を再び漂わさせていた。
名無しの背中に這うナッシュの手が、彼女の言葉を待たずして、下着のホックを容易く外す・・・。
「――・・名無し・・・」
「、ナッシュ・・!あ・・・」
「汚れちまう前に脱がすぜ・・・そうされてえんだろう?まあ返事なんざ聞く気もねえが・・・。いつだっておまえの顔に書いてあるからな・・」
のめり込んで、字の如く溺れ依存してゆく。
「甘えるだけ」がいいことじゃない・・・それももちろん分かっている。
ただ、行き違いの消えた、ようやく重なった想いにまだまだ余韻を引き摺っていたかった。
離れていた時間を今もなお埋めたかった。
好きを抑圧できないから。
今日はもう、本当にこれが最後だから、と――。
「ナッシュ・・――」
懸命に自分に言い聞かせながら、名無しはナッシュに腕を回した。
そんな彼女の感じていた気持ちに、ナッシュもまた性懲りもなく、自嘲を漏らしながら応えていた。
夜が終わって、朝が来て、新しい日を過ごそうとしていたけれど。
まだもう少しだけ、強く愛しく想う彼のベッドのなかで、同じ時間を共有したい・・・。
名無しが抱いたささやかな願いは、纏った下着を呆気なく剥がされたことで、ナッシュの手によって叶えられた。
fondness after3
20171215UP.