rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第36章 fondness afterⅢ
折角自分が声をかけた、その意味をまるまる容易に覆される。
名無しに対しナッシュは小さく舌打ちしながら、その場に留めていた身を乗り出した。
当然、伸ばした腕は名無しをつかまえるため。
そしてベッドの上で組み敷くため――。
それは彼女の言葉に、強靭である筈だったナッシュの理性の糸が、ぷつりと切れた瞬間だった。
「!・・・っ」
「なんだ・・・オレの腕を掃っておいて・・・。帰る気でいたんじゃねえのかよ・・」
「・・・そうだけど・・、だって・・・ナッシュが・・」
「オレが?」
「・・ッ・・・なんでこんなに・・好・・・。欲しいって、思うの・・?」
「、・・・ッ・・」
「まだ足りないの・・・かな・・私・・、おかしく・・・」
さっさと服を着て、出れる準備をして帰ればいい。
ナッシュのシャワーの時間が長い筈ないことだって分かっていたのだから。
名無しがもたもたと、帰るつもりでいたくせにベッドの上に居続けたのは、本音が二分していたからだ。
帰らなければいけないことも本心、そして、帰るなと言って欲しかったこともまた本心。
心の奥底で名無しは喜びを噛み締めた。
それはもちろん、押し倒されたことに対してだった。