rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第35章 fondness afterⅡ
「・・・ほんとに一着あるし・・」
シャワーを浴び終えた名無しがバスタオルを頭に乗せ、少し濡れた髪をフランクに拭いていたのは洗面所でのこと。
漂う石鹸の香りに思わず表情が綻ぶのは、もう何の枷も背負っていなかった、背負う必要もなかった証だろう。
バスローブを纏って寝室に戻ると、名無しは真っ直ぐ、クローゼットの前へと向かっていた。
「・・・ふぅ・・」
浴室から出ても、ベッドに居たナッシュが目を覚ましている気配は感じられなかった。
なら好都合だ・・・そう思い取っ手に腕を伸ばした。
バスタブのなかで戯れていたときに聞いたとおり、おもむろに引き出しの一番上をスッと開ける。
名無しは、そこに自分の下着が本当に入っていたことを視認し、改めて頬に熱を宿していた。
「・・・~・・いつ増えたんだろ・・はぁ・・」
今となっては、もう想いは通じ合っているとみて間違いない。
けれどそれは今の話だ。
下着を手に取って思うのは、名無しは、自分がこれをどんな気持ちでこの部屋に運んでいたのかということ。
一着分増えて持ち無沙汰になってしまったことで、ナッシュだって、どんな心情で引き出しに入れていたことか。
「・・・・」
穿く所作をとるために、ローブ姿のまま、片足をその場で上げようとする。
その際、バランスを崩して頭に被せていたバスタオルが床に落ちると、名無しはそれを拾おうとして、いったん近かったベッドの端へと下着を置いた。