rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第34章 fondness after (side Nameless)
「・・・・」
「・・・―――・・」
深く眠っている様子を見ると、まだ早朝なのかもしれない。
名無しが時間を確認する気にならなかったのは、単純な話、そうしたところで意味がないからだ。
時計や携帯に手を伸ばそうとすれば、ナッシュが目を覚ましてしまうかもしれない・・。
ぎゅっと抱き締められていたその距離感のなか、彼の両腕に包まれて横になっていることに抱く幸せをしばらく噛み締めていたかったのが、名無しの素直な気持ちだった。
「ナッシュ・・?」
「ん・・・・」
「・・・・」
一晩中、枕として伸ばしてくれていた左腕は今も変わらない。
女の頭ひとつと言えども重いだろうにと、少し気が引ける思いを胸に秘め、ふわりと目を細め微笑む。
起き抜けの掠れた声音で発声したのは、試しに呼ぶナッシュの名前。
その近さゆえ、名無しは囁き声で彼を呼んだのだけれど、やはり返事がないあたり、ナッシュの眠りの深さをひしひしと感じていた。