rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第34章 fondness after (side Nameless)
「んん・・・」
広くてあたたかいベッドの上。
片目を擦ろうと、顔に手を添えようとする。
名無しは自分のその腕が思うように上がらなかったことに疑問を感じると、それゆえ自発的に目覚めを促されていた。
紛れもない現実、彼女の身体に重みを与えていたのは、逞しさが見て取れる男の腕だ。
「・・・ッ・・」
「・・・ん・・」
「・・・・」
いつの夜のことだったか。
目にした経験は何度かあった。
だから、たとえ起きたてでも、視界に広がるものには思わずはっきりと既視感が芽生えていた。
今までどの夜も、心から落ち着くことは出来ない状態で目のあたりにしてきたと思う。
ようやくなんの不安もなく朝を迎えていた名無しは今、自分の隣で眠るナッシュに頬を染め、その寝顔に静かに見惚れていた。