rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第31章 rain of fondnessⅪ
「!・・・」
「・・・ずっときらいだった・・ほんとに・・・大嫌いだっ
た・・!ナッシュなんて・・っ。――でも・・・」
箱を受け取ったナッシュは少し動揺していた。
けれど、それよりも勝るのは、もう今に始まったことじゃない名無しへの大きな恋慕だった。
自分を想ってとった彼女の行いに、想われることの意味の深さに改めて銘肝する。
たかだか香水瓶ひとつを渡されただけ・・・そう言ってしまえばそれまでだ。
それでもナッシュが胸に刻み込むほど、名無しの行いに喜びを隠せなかったのは、離したくない相手を前に彼女も同じ気持ちでいてくれたから。
「・・・・」
喉元と声音を震わせて宙に浮かばせかけた名無しの言葉を、またいつものようにキスで掻き消したい気持ちは当然あった。
「・・・ろ」
「、・・・?」
「・・ッ・・・、続けろよ・・聞いてやる。――もうしらばっくれてやるかよ・・・」
真っ赤になった名無しの頬に手を差し伸べる。
優しく撫で、指先は耳たぶをそっとなぞりながら。
シャワーのあとゆえに、今はまだその手首にも、指先にも、ナッシュを連想させる香りは強く纏われてはいなかったけれど。
それでも伝わるぬくもりが、名無しを十分に火照らせる。