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rain of fondness【黒バス/ナッシュ】

第31章 rain of fondnessⅪ



摺り寄せられたナッシュの身体は様々な箇所から同じ香りがして、いつだって名無しの鼻をツンと掠めてきた。
甘いともとれ、ありがちではあるけれど、時にはムスクも香る独特のそれ。

首筋や耳元は勿論のこと、伸ばされた手は指先から香る瞬間が、なんとなく一番どきどきとさせられた。

旅行先で同じ香水を付けた他人とすれ違って胸が高鳴ったのは、名無し自身がどうしようもなく、その匂いとナッシュに溺れていた所為だろう。




「ナッシュ・・」




別にわざわざ買う必要などなかった。
そもそもナッシュ相手に、土産のみの字を連想させることも元々なかったのだ。

ただ、空港で再び同じ香りがして、その箱や中の瓶を持っていればナッシュを近くに感じられると思ったことが、名無しがそれを購入するきっかけにはなっていた。
勿論、そんなわけないということにもすぐに気付いたのだけれど・・・。

同じ香りのする瓶を持っていたって、結局はナッシュから感じなければ意味がないのだから。


「・・っ・・・」


自分で付けることもない。
ならもう本人に渡すほかないだろう。

いつかはちゃんとさらけ出すつもりでいた本音や、素直な気持ちと一緒に・・・。




「ッ・・ナッシュ――・・・、き・・・だった・・」


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