rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第5章 rain of fondnessⅡ
嫌で仕方なかった。
汚されて自分の価値を疑い、それでも脅しを浴び、従順になる他なくナッシュの言うとおりに、幾度となく股を開いてきた。
回を重ねるごとに知ってゆく彼の素顔だったり、自分の知らなかった彼の、もっと知りたいと思うようになった、抱いてはいけない好奇心だったり。
同じベッドで眠って、時折見せる寝顔に悔しくも胸を高鳴らせ、憎しみが霞んだかわりに芽生えたのは妬ける想い。
誰も見ないで欲しい、誰にも触れないで欲しい・・・独りよがりを募らせて、最後に感じたのは、ナッシュを失いたくないという強い気持ち。
傍に居たい、置いて欲しい、彼のすべてを手に入れたい。
そして自分も、そう願われたいと・・・。
「ッ・・・・あ・・・」
「・・・・・・」
「は・・・っ・・・ぁ、ナッシュ・・い――」
「息ができねえなんて、今更言わせるかよ・・・。ん・・・」
心地好く舌が絡み合い、ふとした瞬間に味覚を感じる。
名無しがナッシュに伸ばしていた舌に乗った、彼女自身が流した涙がその遠因だ。
突然脳に送られた、しょっぱいと感じた信号・・・それは夢中になってキスをし合っていた、特に名無しの動作をやむを得ず中断させた。
女々しく涙を頬に垂らしていたのは無意識だった。
ベッドの上でも、シャワーの下でもない・・・こんなところで流すものじゃないとは分かっていても。
名無しはそんな状態になっても、ナッシュが自らの腕の中、自分を閉じ込めたままだったことに安堵を覚え、それがとても嬉しかった。
同じ場所、同じ相手。
初めてのあのときとは違う、今はまるで、別の感情を――。
「ん・・・、ナッシュ・・・ナッシュ・・」
「・・・・・」
「・・す・・・、ッ!・・ん・・・」
「オレが聞きてえのはそんなコトじゃねえよ・・・、それはもう・・・ずっとしらばっくれてきたことだ・・」
「!っ・・・や、ぁ・・」
「今は・・・オレはただ、おまえの善がる声が聞きてえ・・・それだけだ。・・名無し――」