rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第5章 rain of fondnessⅡ
別に絶頂を味わったわけではなかった。
物理的に性感帯を愛でられてはいなかったし、男女の繋がった関係も、まだその場そのときには構築されていなかった。
それなのにどくどくとうねりが身体に滾り、頭の中を真っ白にさせられた気持ちになるのはどうしてだろうか。
分かっていたのは、目の前に映った、ナッシュの瞳のなかに居た自分が再び頬を紅潮させ、言葉を失っていたということ。
その言葉は、口吸われたことで反論の余地もなく、そのまま何も言えずに喉の奥へと沈んでいった。
胸の奥に閉じ込めた想いを押し出そうとすれば、こうして相手によって塞がれる・・・なんて理不尽で横暴なやり方だろう。
こんな男を好きになって、想いがこみ上げて・・・どうしたって憎めなくなっていた。
触れられる唇が、舌が、とても柔らかく心地好い――。
「ふぁ・・、・・・んん・・っ・・・ん・・」
「ん・・・」
扉に手を宛がった名無しは、その平面を掴めるはずもなく空回る。
ゆえに伸ばしたのはナッシュの身体めがけてだった。
勿論、それまで抵抗していたのは本当だ。
心ない言葉を浴びせられ、モラルの欠片も感じられない、尖った物言いで辱められた。
考えたくなかった、最初の関係を持った日のことを嫌でも思い出させられて、脳裏には、その時の自分の悲愴な叫喚がまた降り注がれた。