rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第26章 rain of fondnessⅩ
まるで意思を持っているかのように、水面上には溢れんばかりに雫が舞っている。
静まりそうもなかったのは他でもない、自分が身体をやたらに動かし、湯船を揺らしていたからだ。
「は・・・、ぁ・・」
「ん・・・」
詰められたのはバスタブの端。
腰を上げ、もたれても、すぐ背後には壁があった。
触れて俄かに冷ややかだった感触に身を震わせれば、皮膚の表面にはうっすらと鳥肌が浮き立つ。
例外なく、胸の先も尖ってしまったことが、名無しは今更恥ずかしかった。
「ちゅ――・・・ん・・」
「ッ・・、ン・・・、ぁ・・」
待つわけがない。
違えた言い回しではあったものの、はっきりとそう口にされ、浴室の中に甘い声を響かせる。
こうなることは分かっていた・・・けれど、火の点いたナッシュの押しには、ほんの少しの狼狽を露わにしてしまうことも致し方なかった。
まあ無理もないだろう・・・逃しはしない、そう訴えるような強い視線を近くで浴びせられれば、拒む気が無くても自然と腰は引けていた。