rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第26章 rain of fondnessⅩ
「は・・・、・・ん!」
「・・ん・・・名無し」
「ッ・・・」
初めて本音という本音を聞かされたようなものだった。
そのナッシュの口から語られた言の葉の隅々には、小さな焦燥や、また平行して愛きものも確かに感じる。
名無しはそれらに嬉々を覚えつつも、ただ女々しいだけじゃない、凛としていたい・・・そんな可愛げを残した反抗的な振舞いを見せたいという想いも同時に抱いていた。
もっとも、しゃん、と振舞いたかったのに、そんな演技ひとつできずに実際の彼女はただの女々しいそのもの。
慌てふためいて、結局頬を赤らめるだけに終わっていたあたりもまた、実に名無しらしかった。
「は・・・」
求められた時に身を起こして運よく抱擁から逃れていても、背後に退路はなく、名無しの心と身体は容易に追いつめられて思わず目が泳ぐ。
困惑を見せたその機、ナッシュは好都合とばかりに自身も湯船から腰を上げると、そのまま単独にして四面楚歌の状況を作りながら、壁に背をつけた彼女の唇に躊躇なく口付けた。