rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第25章 rain of fondnessⅨ-2
唇をなぞるナッシュの手も勿論濡れている。
互いの部位が吸い付き合うようにして触れ合うと、ゆっくりと開かされた口腔に、彼は指を忍び込ませた。
開けきらない口は、その太い中指を上下の歯で挟み込む。
窮屈な感触をたかだか指一本に味わわせていたのだけれど、名無しはどうしていいか分からず、その指をきゅっと、唇を窄めることで別の狭窄感を形にしてみせた。
が、名無しの舌が指に触れた瞬間、ナッシュはすましていた表情をいい意味で曇らせると、思いのほかすぐにその指を口腔から抜いた。
無論、彼女の口が含むべきは自分の手などではなく、また別の・・・そう思ったから。
その手をずらして頬にあてると、ナッシュはゆっくりと顔を近付け、名無しに初めて聞かせる言葉を静かに綴った。
誰にも言うつもりのなかったそれを・・・。
口寂しさに、軽い、触れるだけのキスを一度交わす。
そのあまりに驚き、キョトンとした顔をする名無しを間近に、ナッシュはその場で自分の中に、これ以上ない想いが溢れてゆくのを感じていた。