rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第25章 rain of fondnessⅨ-2
顔は互いに見えていない。
だからどんな表情をしているかなんてわからない筈だ。
なのに、ナッシュはきっと、名無しの声音ひとつですべてを汲み取っているに違いない。
どんな些細な音の変化にだって彼は気付く。
ナッシュにとって、名無しが振った水嵩についてのネタをさらりと受け流し、別の内容に話を切り替えることなどは造作もないことだった。
それが嬉しくて、肩で安堵した様子を示してみせる。
けれど数秒経って新たに声掛けされたその本題に対し、名無しがその身を捩じると、彼女は浮力を使って簡単に振り返り、結局ナッシュと視線を合わせた。
「だって・・・ナッシュが呼び出すから・・っ。嫌だって言ってるのに・・・こっちの都合なんて構いもしないで・・」
「だからそれは、啼かねえ夜が一度でもあったら言えた台詞だな・・・。よくもまあ、あれだけ喘いでおいてそんな口が叩けるもんだぜ・・フッ」
「ッ・・・」