rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第25章 rain of fondnessⅨ-2
「おまえの家も、これくらいすぐ溜まるだろうが・・・どこだってそうだ」
「うぅ・・・、そうだけど・・」
波立った湯船に身体を沈めると、そこで最初に漂ったのは、静寂を背負った空気だった。
いざシャワーが止められて今は落ち着いていた筈なのに、名無しは、その言葉から自分がどんどんかけ離れているような気がしてならなかった。
「・・・・・」
静かすぎるからといって、不自然に水面を揺らし、湯が宙ではぜる音を何度も鳴らすわけにもいかない・・・。
ほんの数秒だろうとはいえ、ただただ静けさに対しては早く音が混ざってほしいと、名無しはその瞬間を待っていた。
「・・・・・」
「・・・おい」
「っ・・、なに・・・?」
本当に不思議な気持ちだ・・・名無しはそう思う。
ナッシュと一緒に湯船のなかに居るということは、既に十分に熱のこもった身体に対し、更に火照りを加えるようなものだ。
そう想定してのことだろう、だから湯の温度は意外に高すぎることはなく、おかげで名無しは少しだけ、再び適度な眠気に襲われていた。
勿論、適度ゆえに実際眠ることもなかったし、そうならないためにバスタブでは膝を折った。
こじんまりとその中におさまってみせたのだ。
が、自分と向かい合わせにナッシュが来ると予想立てていた名無しは、直後見事にその予想を裏切られ、あっさりと彼に背後を許していた。