rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第24章 rain of fondnessⅨ
『ッ・・・は、ぁ・・お湯・・・溜め・・?!ァ・・ん・・ッ』
『渇いてたんだろう?オレのも飲んでたことだしな・・・口直しがてら、こっちもしっかり飲んどけよ』
『・・・ッ!あれは・・、ッふぁ・・、冷・・め・・・んん』
ボトルの水を飲むナッシュの仕草は、そこに口を付けるというよりは下唇に飲み口を引っかけるだけで、開口した腔内に、おもいきり流し込むようにして中身を注いでいた。
上を向いていたことで突出して窺える太ましい首筋は、喉仏の動きが名無しには捉えられず、確かに飲み物を嚥下したという確信は持てずじまいだった。
だからといって、その口いっぱいに注がれていた、まだ冷たさの残る水がまさか自分に口移されるなど、おそらく頭の回転が速い状況でも、そのときの彼女にわかる筈もなかった。
ナッシュの手にとっては随分と掴みやすいであろう、細い顔のラインを掌握され、名無しは口腔に広がったひんやりとした感触に驚きながら、一度背筋を震わせた。