rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第24章 rain of fondnessⅨ
『好・・・っ、・・・うん・・飲みやすいし、美味しいんだもん・・これがいちばん・・・』
『・・・よく被るな・・おまえとは』
『え・・?』
『いや・・・。おい、その隣の水も持って来い・・』
『?・・・ん』
施設から家に戻るまでに立ち寄った店で口にしたものと、同じ炭酸水を手にした名無しに見せるナッシュの表情は、またいつになく目を細めた優しい眼差しだった。
勿論、彼女が冷蔵庫の中に目を向けていたからこそ、零すことのできたそれだ。
ナッシュは着たばかりだったローブを脱ぎ捨てるとようやく再び浴室に入りきり、すぐ続く名無しの為、バスタブの栓に手を伸ばした。
自分と二人分、その身が浸かれば水嵩も増すゆえ、溜める湯はほんの少しで恐らく大丈夫だった。
入浴できるまでもきっと一瞬だろう・・・短い時間の「つなぎ」に使うべく、ナッシュは互いに好んでいたボトルとは別に、ただのミネラルウォーターも一本、名無しに持たせていた。
当然、その予備の水も、口にする為という意味では用途を違えることはなかったのだけれど・・・。
『・・・ナッ・・?!んん・・・ッ、ふ・・ん!・・・ン』
『・・・んっ・・』
慌てて冷蔵庫の扉を閉め、キッチンから移った名無しもまた浴室に入る。
すると直ぐさまナッシュにミネラルウォーターの入ったボトルを奪われ、その強引さに浮かべたのは脳裏に疑問符だ。
やんわりとシャワーを出しながら身体を濡らし、次いでおもむろにキャップを回すナッシュは、やることと言えば既に決めていたと言わんばかりに、躊躇なく手を動かしていた。
飲み口に唇を宛がうと、彼が次にしたのは他でもない、咥内に含んだ水をそのまま名無しに飲ませることだった。