rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第23章 rain of fondnessⅧ-2
「!・・・あ・・」
「、・・・ああ、起きたのかよ・・」
「っ・・・ん、・・ごめん・・・眠っちゃって・・たんだよね・・、あの・・・ッ」
「?・・・なんだ」
「・・・なんでもない・・、・・・」
ハッとして大きく目を見開いた名無しは、握り損ねた枕カバーのかわりに、自らの爪で手のひらを引っ掻き、ほんの一瞬眉を顰めた表情を零した。
耽る回想に鳴らした喉、見上げた天井に透けて見ていた、自分を強く組み敷くナッシュの姿を脳裏で描いていたら、その本人が現れたのだから無理もないといえばそうだろう。
声をかけられるまで気付かなかったのは勿論、その空中に居た彼の幻想を凝視しきっていた所為だ。
身体にケットをかけていて心底良かったと思いながら名無しは飛び起き、ヘッドボードに背をつけ、ローブ姿のナッシュに目を向けた。
「てっきり拗ね倒してるかと思ったが・・・そうでもねえみてえだな」
「?ッ・・・な・・」
「ハン・・・ッ、そうだろう?一人にされて、大体は膨れっ面で、オレが戻るのを待ってたじゃねえか」
「そんなこと・・・っ」
「そうだろう?」
「う・・・、ッ・・・うん・・」
「フフッ・・・」
大した時間は過ぎていない筈だった。
それはただ名無しが勝手にそう思っていただけなのか、実際はそれなりの時間が経っていたのか。
こたえは簡単だ。
男であるナッシュには、シャワーを浴びるのに大層な時間は必要ない。
ナッシュは名無しの傍に歩み寄ると、放置していた自分の携帯で軽く時間を確認し、すぐにまたそれをポイと投げ捨てた。
電話がソファの上にぽふりと落ちて、自動で画面が消えるまでの数秒に色々な通知があったことが確認出来たけれど、彼はそんなことには微塵も興味を示さなかった。