rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第23章 rain of fondnessⅧ-2
「・・・!チッ・・・忘れてたな、そういや・・」
名無しの心境に変化があって、抱く度に、自分にだって背負うものは増えた。
思慕されていることに知らないふりをする度、胸がずきずきと痛んだ。
が、自分の抱いた気持ちを心の中ですぐに認めた瞬間、その胸の痛みが馬鹿みたく消えていったのはどんな冗談よりも笑えなかったけれど、それがまた逆に面白くもあった。
遊びのつもりで好き放題弄んでいた筈なのに・・・。
何を天秤にかけようとも、ナッシュにとっても、名無しが傍にいないことを苦痛と思わずに済む手段は、もはや詮索不可能だった。
「・・・フッ・・」
自分が見下していた人間は山のようにいる。
相手を問わず、チームメイトにだって吐く毒も時々あった。
サル呼ばわりする人種だっていたのだ・・・そのうえで自らもサル同然の如く、腰を振って、発情って、何度抱いたってまだ足りないと柔肌に焦がれる。
ナッシュはシャワーの水量をゆっくりと弱めると、最終的にそれを止め、数回首を横に振った。
飛び散った雫が湿った身体に更に重なって肩や胸板を濡らしていたけれど、彼は構うことなく浴室の扉を開け、思い出したかのようにそこから退室した。
寝室から着てきたものではなく、洗面所にあったバスローブのストックに新たに手を伸ばす。
身体を一度も拭くことなくそれを羽織る様は、少しの焦燥を孕んでいるようにも見えた。