rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第22章 rain of fondnessⅧ
「・・・フゥ・・」
ナッシュに呼び出されるがまま、名無しが彼と二度目を迎えたのもまた同じ建物だった。
最初に置き去りにされたとき、咽び泣きながらもやがて冷静さを取り戻したのは、身体の中に取り残されたどろどろの欲望をどうにかしたいと思ったから。
去り際に遠くで聞こえた、施設は好きに使えばいいという言葉に目もくれず、汚れた身体は自分なりに綺麗にした。
シャワーなんて、こんなところで浴びる暇があるのならさっさと家で浴びたかった。
使い慣れたシャンプーや石鹸で全部洗い流してやると誓って、その勢いのまま、下肢をケアするための手段も自力で調べた。
冷静さが取り戻されればされるほど、より自分が冷静であることを名無しは自身恐ろしく感じ、いつ二度目が来てもいいように気が付けば心構えもしていた。
それが不安による構えだと、十中八九言い切れないことが辛かった。
強姦されたというのに、少しでも何らかの期待を頭の片隅に持ってしまっていること・・・。
嫌がったのに、淡く甘い欲求があったことそのものが、誰かに助けを求めるという救済の手段を彼女に断たせていた。
事ある毎に、何度だって行き来する自覚と無自覚。
意味するものはただひとつ。
あのとき感じた快感をまた浴びせられたい。
飽きられるそのときまで――。
そしてその感情は、いつしか早く捨てられたいと願うことから、捨てられるまでせめて夢を見させていて欲しいという望みに移り、最後には、ずっと求められていたいというナッシュ本人への恋慕に変わっていた。