rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第22章 rain of fondnessⅧ
「ハァ・・・・―――」
物理的に身体の汚れが流されてゆくだけでなく、心が洗われる気がするのはどうしてだろうか。
耳心地の良いシャワーの音があたたかい感触と五感を越えて混ざり合い、端正なナッシュの体躯に、なめらかに湯が滑ってゆく。
「・・・・・」
長い前髪をかきあげて、濡れた顔の水分を手のひらで一度掃う。
その手を口元にあてたまま、ナッシュもまた、同刻、ベッドに居た名無しと同じように、伏せた瞳の奥でひとり思い出していた。
『・・・、は・・い』
『・・・!ハハ・・・偉いじゃねえか、ちゃんと出やがった』
『・・・・・』
『生真面目なオンナ・・・番号掴まれようが、電話なんざ拒否ひとつでどうとでもなるだろうが』
『っ・・・』
『まあいい・・・来いよ。待っててやるから・・・遊ぼうぜ?』
一人身支度を整える。
建物からの去り際、重い扉を開いたとき一度振り返って目を向けた名無しの姿は、ようやくベンチから背を離していた機とちょうど重なっていた。
赤が混じる白い頬に何度も涙が伝い、乱された服の裾は、腕を交互にして掴み自分自身を抱き締める。
男の精液が女の体内に下から入ればどうなるか・・・。
雌雄の摂理を知らない筈ない年齢ではあったけれど、敢えて口にすることで絶望感をより漂わさせる。
彼女の内腿に垂れ零れた自分の白濁を遠目で見ていたナッシュは、抱いた後の名無しの、やけに艶めいた容姿に思わず生唾を飲んでいた。