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rain of fondness【黒バス/ナッシュ】

第22章 rain of fondnessⅧ



服の乱れをしれっと整え襟元を正す。

着こなされたスーツ姿からは想像もつかないほど、ナッシュが名無しにした行為は卑劣極まりなかった。

細い首筋にかかった髪をひと掃いして、露わにさせた部分に映えるのは、肌色に乗った赤黒い鬱血。
それを目視しながら彼女の耳元でそっと囁いたナッシュの言葉は、名無しの涙腺をそのとき初めて崩壊させた。


ずっとずっと耐えていた、潤んだ瞳から決壊したそれは止め処なく流れる。

その原因の曖昧さに名無しは両手で顔を覆い、脆弱に咽び泣き続けた。


身体の隅々まで好きでもない男に汚されたこと。

その男に快楽を味わわされ、不甲斐ないと痛感したこと。

行為が終わって、解放されて安心できたこと。

起き上がれなくとも、気持ちの整理を自分なりにつけようとしたところで連絡手段を掴まれて、これが終わりじゃない・・・二度目以降もあるのだと知らされたこと。


「・・・・・」


その次があると知った瞬間、悲鳴を上げていた身体がやけに疼いた気がして、名無しはそのとき、自分で自分を信じられなくなっていた。


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