rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第4章 rain of fondness4
「・・・・・」
「・・・あ・・、荷物なら全部うちだよ・・一度帰ったから。そのまま・・・ゆっくりしようと思った、けど・・・でも、・・会・・・――!ナ・・」
「――・・・バカが・・!のこのことツラ見せに来やがって・・・」
「・・・っ・・」
「今夜・・・まさか帰れると思ってねえだろうな・・・?」
「ッ・・・・、・・ナッシュ・・・――」
ナッシュが鼻で笑っていたシルバーは、顔が見えずとも、どうせ同じ部位の下を伸ばしながら、女に向けて下劣な表情を零していたことだろう。
傍に名無しが居たと分かった瞬間、彼もまた、そんなシルバーと女の存在など心底どうでもいいと思っていた。
もと居た場所から離れる為、自分と同じように背を向けていた筈の名無しが少しの時間差で振り返ったことは、ナッシュも最初は信じられなかった。
けれど、目が合ったと同時にそれは事実に変わる。
「・・・・・・」
表情を変えず、そして言葉も交わさず・・・。
落ち合うためには、互いに共通する場所を辿るのが一番だと感じた。
ナッシュにとってその場所の記憶は、一見名無しよりは薄いもののように思える。
が、そんなわけなかったのは、彼が、今は誰よりも何よりも名無しのことを考えていたからだろう。
このとき会える所など、ひとつしか浮かばなかった。
思い出すことで名無しの心の傷を深くすることになっても、抉るも癒すも、それはどちらもナッシュ次第。
とにかく、まず会わなければいけないと強く思った。
二週間。
離れて初めて、手の届くところで彼女を独占していたいと・・・ナッシュはそう痛感していた。