rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第4章 rain of fondness4
「驚いたぜ・・・おまえ、よく此処にオレが居るって分かったな。・・・戻ってたのかよ」
「・・・帰る日の・・・今日の時間。お昼過ぎだって・・この前言い忘れてたの。ここにはなんとなく来ただけ・・・そしたら、ほんとに居るんだもん・・・私だっておどろ・・、・・・っ」
ナッシュは勝つと分かっているゲームに対して、意外と手を抜くことはなかった。
クオリティの高いパフォーマンスを魅せる分、自ずと手先には力が入り、真剣になるからだ。
それは長い間そのスポーツに触れ続け、彼自身培ってきた能力の賜物だろう。
けれど、心は真っ直ぐに向き合わせることがなかったからこそ、それが相手を見ていないことにも繋がり、称賛の裏に悪評を孕ませている。
それでもどれだけ嫌われていようと、実力があるゆえに人は集まっていた。
「・・・・・」
ギャラリーの中、ジョーク雑じりに、チーム内に繋がりある男女が居ることは日常茶飯事だった。
今日も例外ではなかった・・・タイムアップと同時に声を出した女の声も、もう何度も聞いたことがあった。
ああ、どうせまたあの女だろう・・・好き好んでやたらとシルバーに絡む、癖の強く、尻の軽い・・・。
そうぼんやりと考えながら、ナッシュはタイムアップ後、区画内にある、自由に使用することを許されていたクラブハウスに向かおうと足を一歩進めた。
ナッシュがコートから遠ざかろうとしながらも、女の声のする方を一度見たのは、胸騒ぎがしたからとか、そんな夢のある理由じゃあなかった。
言うなれば、くせのようなものだ。
いつもの女、その女の居る場所に向かったのがまたシルバーだったことも、毎度のことで分かり切っていたとしても、仲間の素行を鼻で笑う習慣がついていたのだ。
何より、自分も少し前までは、シルバーたちに同じようなことをされていたのだから・・・。
そうして癖で振り返ったその方向、少し視線をずらした瞬間にナッシュが目を見開いたのは、至極自然な出来事だった。
どんなに遠くても間違えるわけがない・・・。
背を向いていても、人ごみの中でも。
自分が長らく、この手の中で意のままにしたいと感じる相手の姿を――。