rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第4章 rain of fondness4
「っ・・・」
胸が苦しい。
どういう理由でそうなっていたのか、服の上に手をあて、名無しは考える。
傷つきたくなかったから、ついた傷に、更に毒を塗り込まれるような思いをしたくなかったから。
そこに訪れることなど、もう二度とありえない・・・そう感じていた場所。
「おい・・・」
「!・・・・」
あのとき。
前方に気を配りつつ、携帯の画面を覗きこみながら歩いていた。
なんとなく人が来るなと思い、肩がぶつかるかもしれないから気を付けようと、十分に配慮して道を進んだ。
『っ・・・すみま・・せ・・、・・・っ』
『――・・・』
『・・・あの・・!!や・・・』
『ちょうどよかったぜ・・・むしゃくしゃしてたところだ。・・・分かるよな?来い』
大丈夫だ・・・そう思った瞬間、ドン、といかにも鈍い音が耳に響いて、憶測を誤ったことに名無しは気付く。
ぶつかった相手は思いのほか体格の良く、まずいと感じたその瞬間から、思考も、見えていた景色も、そしてその先の未来も、一瞬にして暗転した――。
ギャラリーから離れ、その初めて出会った場所に立つと、名無しはほんの少し足を竦ませていた。