rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第18章 rain of fondnessⅦ-2
『・・!いや・・・・嫌・・っ』
『見られるのが趣味なら残念だったな・・・今日はもう、此処には誰も来ねえよ。・・・名無し?』
『!――い・・・ッ・・あ・・!!』
『さてと・・・』
手首を解放されれば、きっと赤く跡が残っていることだろう。
それほど痛みは決して小さいものではなかった。
名無しは歩かされる直前、持っていた携帯を奪われ、その画面をナッシュに見られていた。
今日日、機種なんて殆ど他人とかぶるものだ・・・慣れた手つきで操作され、返された時には、開いていた画面がひとつふたつ戻っていた。
仲の良い友人とのやりとりに自分を飾る必要もない。
ナッシュが見たのは、友人からの連絡の中にあった名無しの名と、これから彼女に訪れる筈であった、このあとの予定が記載された画面だけ。
歩きながら気まぐれに自身の苛立ちを説き、施設に着いてその重い扉を開ける。
名無しを室内に放り込んだその一瞬が、彼女の名前を、ナッシュが初めて口にした瞬間だった。