rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第18章 rain of fondnessⅦ-2
元々歩いていた、そして無言で歩かされたその敷地にあった歩道は、友人と待ち合わせる為に開いた地図アプリで、ここを通ればショートカットできると記載されていた場所だった。
だから予定通り名無しは真っ直ぐ進んでいたのだけれど、ナッシュとぶつかったことで彼女の目的は無情にも叶うことがなかった。
本来の目的地である最寄りの駅も、もうまもなくの筈・・・。
そんな状況のなか目当ての道とは少し筋を違えさせられ、運命を狂わされ、やがて名無しがナッシュに連れられたのは、やけに無機質に感じる建物だった。
勿論、建物そのものはみな無機質だろう・・・それでも特筆してそう思ったのは、自分が突如として置かれた図式の所為。
ナッシュは自分の持つ肩書き上その建物に縁が深かったらしく、掘り下げてみればその深さも分かる、この敷地の中にはストリートコートがあった。
それでも設置されている、という程度の軽い理解しかなかった名無しにとって、彼が本当にプレイヤーで、たとえ日常のどこか、メディアで目にしていたとしても、コートを駆け回っている姿の想像は到底付かずにいた。