rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第18章 rain of fondnessⅦ-2
『・・・黙りっぱなしってのもつまらねえな・・、仕方ねえから親切してやるよ』
『・・・ッ・・、?!』
『オレは此処をよく通るし、向こうの敷地にもそれなりに面は出してる・・・だからオレが此処を歩くのは、別におかしなことじゃねえんだよ』
『・・・っ』
『よくある話だ・・・忘れちまったんだよ・・・携帯を。・・・まったくダセぇこった。その帰りにムシャクシャしながら歩いてたら、見ず知らずのおまえとばったりってわけだ・・』
『っ・・・それと・・私は・・・、なんの関係も無・・・!痛・・ッ』
『ああそうだ・・・八つ当たりになるよなァ?!ハハ・・・!まあ、電話ひとつに腹立ててるところに、画面に夢中になってる女が前から歩いて来りゃあ・・・あとは分かるだろ』
『ッ・・・や・・』
『まさかこう何度も、同じ場所に戻ることになるとはオレも思わなかったぜ・・・フッ』
顔と名前、そしてその男が何をしているどういう人間か・・・。
それくらいしか情報が降ってくることはなかったけれど、名無しは自分の腕を取る男がナッシュであることに、確信と絶望を同時に持った。
自分がどんなに疎くても、生活している中でどうしても入ってくる知識というものはあった。
その薄い情報の中に組みこまれた、ナッシュという男のデータが名無しの脳裏に並べられる。
当然、逃げるべきだという信号が、ひたすら頭の中でループしていた。