rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第18章 rain of fondnessⅦ-2
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『・・・、あの・・』
『?・・・へえ、おまえ・・・なるほどな・・』
『?!あ・・・』
『!・・・ふっ・・気付いてはいるらしいな・・・まあそれくらいの方がいいか・・・。それに、その方が知らしめ甲斐もある・・・事の次第では仕込み甲斐もな』
肩がぶつかったとき、頑なに謝罪しても、男の目には感情に変化があったような気配は感じられなかった。
ただただ冷たいその色は緑。
瞳は素直に綺麗だと思ったのに、奥に潜む淀みが、一瞬にして名無しに恐怖心を抱かせる。
『痛・・・っ・・、・・・なに・・?!離・・』
『何度も言わせるな・・・ムシャクシャしてるっつったろ。おまえ・・人にぶつかっておいてその態度はねえよな?』
『・・・っ、私は・・・避け・・なのにあなたが、・・・!痛い・・・ッ』
『どいつもこいつも、何処も彼処も多いよなァ・・・?余所見してると痛い目に遭うのは当然だと思うぜ・・?・・・そんな夢中になって、何見てた』
『!・・・返・・っ』
ぶつかる直前、距離が縮まる度に嵩高い男性が近付いているな・・・とは思っていた。
だからこそ注意を払っていたのも事実だ。
誤った目測が触れ合った結果を生んでいたのか、それとも名無しの知らないところで故意に起きてしまったのかは、そのときの彼女には分かる由もない。
ただ貫いたのは、絶対に避けきったという自分なりの信念だけ。
けれど、結局相手に否定され続ければ、その貫きたいひとつの言い分さえ折れ霞んでしまう。
どんなに気を付けていようとも、名無しはそのとき、携帯に届いたメッセージの返信を打つべきではなかったのだと、とても悔やんだ。