rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第17章 rain of fondnessⅦ
「―――・・・」
文字通り身体も心も満たされて、骨抜きにされて多幸感は髄を極めている。
腕も上げられない、声も出せない・・・それならまた、暫く意識を預ける他ないのが、名無しなりにその場で出せるこたえだった。
けれど無心になったときに聞こえたナッシュの声が、言葉が、それまで無気力だった彼女をいとも簡単に突き動かす。
結局人の身体というものはなんて未知数なのだろうと、好いてしまった男の言葉に込められた気持ちひとつで、どうにでもなるということを思い知らされる。
こみ上げる想いは様々だ。
これを自分のなかでどう処理するべきか・・・。
口元を抑えたのは、変な声が上がらないように自制するためでもあったのだけれど、そこで喉が鳴らないよう防ぐことは出来たとしても、名無しに熱くなった目頭をどうにかすることは、今はどうしても不可能だった。
「ッ・・・、・・ナッシュ・・・――」
泣けばすぐに気付かれる。
シャワーを浴び終えて彼が戻れば、必ずナッシュは名無しにそれを言及するだろう。
分かっていても涙は止まらなかった。
ぽろぽろと零れ落ちるそれはベッドシーツを濡らし、名無しは再び枕に頭をつけなければならないほど、ナッシュが口にした彼の本音に嬉々を覚えていた。