rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第17章 rain of fondnessⅦ
僅かな距離ではあったけれど、足音が遠のいてゆくそれは、数秒後には完全に途切れていた。
次に聞こえたのは、シャワーの流れる音だった。
「・・・・ッ・・・」
広い広い、ベッドの上で身体を起こす。
枕から変わった今はケットの端を握り締めながら、名無しはつい先刻自分が耳にしたものが信じられずに、ただひたすら赤ら顔で困惑していた。
「・・っ・・・」
意識がなかったのは事実。
ただ、それはほんの数分間の出来事で、名無しが眠っていた時間はとても少なかった。
目を閉じたまま自分が眠っていたと自覚したのは、ナッシュがベッドから立ちあがり、その上に一人きりにされたときだ。
ぬくもりが一瞬にして離れ、それを寂しく感じたから、すぐに自らも追おうと思った末の目覚めだった。
が、旅行の疲れと、時差の影響で元の時間帯に馴染みきっていなかったことに加え、何度も何度も攻め抜かれた身体は見えない悲鳴を上げていた。
まさに無気力という状態が、名無しにアクションをどうしても取らせようとはしなかった。
手を伸ばし、ナッシュの名を口にして彼を呼び止めたい・・・。
そんな想いすら、疲弊した心身は、彼女に言動ひとつたりとも起こさせなかった。