rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第16章 rain of fondnessⅥ
『そうだな・・・そんなに会ってなかったのか。・・まあそうか・・・、そのあいだオレはずっと・・、っ――』
逢瀬は増えても、名無しが自分に絆される気配はあまり感じられなかった。
それでも身体だけはどんどんいやらしくなって、冗談交じりに挑発すれば、面白いほど過敏に反応を返すようになった。
ベッドの中だけは愛し合っているような錯覚に陥る、なんていうのはよくある話。
いつしか彼女の中で新しく想いが芽生えども、愛情が生まれたことも、それを燻らせていたことも、ずっと何かを自分に言いあぐねていたことも、分からない筈がナッシュにはなかった。
『・・――ハ・・ッ・・・。・・ずっと、か・・・』
泣き顔見たさにとことんまで突き落とした。
勿論、いいオモチャだったのだから決して捨てはしない。
けれどセックスの終わりにいつも交わしていた口吸いに、先に熱情を込め始めたのはナッシュ自身だった。
回数が増せば、過ごす時間も自ずと長くなる・・・。
密室での会話、肌を重ねることそのものに慣れ、そんな頃に互いに抱いたのは、今更それ以上の何かを求めてもいいのかということだった。
目を見て抱き合っていれば、想いは嫌でも伝わっていたのに――。
解けかけた糸は寸ででいつも複雑に絡み合うばかりで、どうしても、二人のあいだにはもどかしさが邪魔をしていた。