第10章 手の温もり一期一振
何故、こうなったのだろうか。
今の状況に至る原因は紛れもなく一期一振にある。
だが、一期一振は目の前で起きてることがにわかに信じられなかった。
ひゅうがが一期一振の部屋にいる。
彼女は戸惑うこともなく平然と部屋に入り、布団を敷き始めた。
むしろ一期一振の方が戸惑っているくらいだ。
二人きりになりたいとひゅうがに告げ、彼女はわかったと言った。
何がわかったというのか。
一期一振が現状に追いつけないでいると、ひゅうがは彼の武具を解き始めた。
「主っ?あの……っ」
ひゅうがが一期一振の体に手を伸ばし武具を解く度に、寝間着の合わせから彼女の素肌が時折覗かせる。
その姿に一期一振は顔を赤らめた。
ひゅうがと枕を共にする。
そんなつもりはないと言い切れるかわからない。
だが、ひゅうがはそのつもりでここに来たのかもしれない。
武具を全て解き、上着を脱がすと、ひゅうがは一期一振を布団に横たわるよう促した。
「主……」
「何も言わないで、静かに……目を閉じて」
ひゅうがに言われるまま布団に横たわると、ひゅうがが一期一振の横に座る。
そして、一期一振の額に手を添えた。
「ほら…………聞こえる?」
一期一振はさらに戸惑うが、彼女の手の温もりが心地良く、ゆっくりと目を閉じる。
そして、周りの音に神経を研ぎ澄ませていった。