第15章 情欲と理性の間で 一期一振※執筆中
眩い光が収まり、ひゅうがはゆっくりと目を開ける。
すると、ひゅうがは目の前の刀剣男士の姿に目を見張った。
「山姥切国広だ」
「やまんばぎり……山姥切、国広……?」
山姥切の名前を繰り返し呼び、彼の姿をまじまじと見た。
彼の紋、そしてその姿。やはり、見覚えがある。
けれど、思い出せない。
そして、山姥切国広の姿を見ていると、ひゅうがは言いようのない感情が心の底から溢れてくるような気がした。
ひゅうがと山姥切国広、お互いが見つめ合う中、山姥切は彼女の視線にはっと息を飲む。
「なんだ……その目、は……?」
「え……?」
ひゅうがが目元に手を当てると、指先が何かで濡れる。
「涙?私……泣いているの?」
指先に触れたのは、涙。
ひゅうがの瞳からは止めどなく涙が流れ、頰を伝っていた。
何故だろう。
理由はわからない。
けれど、ひゅうがは山姥切国広の姿を見ていると、悲しいという感情がひゅうがの心を締め付ける。
「何故、泣く……俺が、写しだからか?」
「写し?」
山姥切国広は一瞬だけ顔を歪ませた。
「俺は足利城主、長尾顕長の依頼で打たれた刀だ。……山姥切の写しとしてな。けど俺は……っ」
「国広の、第一の傑作……」
山姥切が言おうとした言葉を、ひゅうがが紡ぐ。
山姥切は訝しげな表情でひゅうがを見た。
「俺を知っているのか?」
ひゅうがは首を左右に振った。
知らない。
知らないはずだ。
それなのに、何故彼のことを知っているのか。
何故、見覚えがあったのか。
ひゅうがにもわからない、ひゅうがのこと。
ひゅうがは不安に駆られ俯くと、自分の両手で自分の身体を抱きしめた。