第10章 手の温もり一期一振
「主、あの……ここへは加州殿も来るのですか?」
「加州?ううん、加州どころか誰もここのことは知らないよ。だけど一期一振が知っちゃったから、この事は私と一期一振の秘密ね」
先ほどの悲しげな表情から、笑顔になったひゅうがに一期一振は安堵した。
そして、ひゅうがと自分だけの秘密ができたことに、一期一振は嬉しさを感じる。
「また、こちらに来てもいいですか?」
「もちろんだよ、好きなときにきて。けど……」
「誰にも見つからないように……ですね」
一期一振がそう言うと、ひゅうがは穏やかに微笑む。
「さぁ、そろそろ戻ろう?昼食前に戻らないと、加州に探されちゃうよ」
ひゅうがと一期一振は来た時と同じ道を誰にも見つからないように戻ると、それぞれ自室へと戻っていく。