第10章 手の温もり一期一振
戦いが終わり、刀剣男士も審神者も必要ではなくなる日が来たら。
一期一振の問いに、ひゅうがは言葉を詰まらせた。
「その時は…………まだ、わからないかな」
困ったように笑うひゅうが。
その表情に一期一振は胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。
「けど、この本丸でみんなと過ごして……毎日がすごく楽しい。だから、ずっとここにいられたらいいのに」
一期一振から顔を逸らし、遠くを見つめるひゅうがの横顔は、悲しげな表情をしていた。
まるで、それが叶わないかのように。
戦いが終われば、ひゅうがはどこかへいなくなってしまうのではないか。
そう思わずにいられなかった。
ひゅうがは儚く、脆い。
吹けば飛んでいってしまう綿毛のように、すぐにでもいなくなってしまいそうだ。
一期一振にはそう思えてならなかった。
「主……」
一期一振はこれまで、ひゅうがに必要とされたいと思っていた。
だが、必要とされたい、愛されたいと願うだけではなく、ひゅうがを必要とすることで、いつか彼女に必要とされたい。
ひゅうがを支え、護りたい。
彼女が一期一振にしてくれたように、一期一振もまたひゅうがを喜ばせたい。
彼女の心に寄り添いたいと思った。
「その時が来るように……誠心誠意、貴方に尽くします」
「一期一振……ありがとう」
自分がどう在るべきか、一期一振に答えが出たのた。
ひゅうがに寄り添い、彼女を護る刀でありたい。
その為に己を高めていこうと。
だが、一期一振には少し不安に思うことがあった。