第10章 手の温もり一期一振
一期一振はひゅうがに東屋へと手を引かれ、東屋にある椅子に座るよう促される。
今なら、ひゅうがとゆっくり話すことが出来る。
一期一振はひゅうがの隣に座ると、彼女の目を見据えた。
「主、お聞きしたいことがあります」
真剣な一期一振の表情に、ひゅうがはただ微笑む。
ひゅうがの青い瞳は、まるで一期一振が何を聞こうとしているのかわかっているように感じられた。
「どうぞ?私に応えられることなら、なんでも」
「主、貴方はなぜ戦うことを選んだのですか?」
一期一振は己がどう在るべきか答えを出したかった。
ひゅうがの刀として戦うにしろ、彼女のことを一期一振はよく知らない。
一期一振にとっては、幼くか弱いひゅうがが何故審神者になり、なんのために戦うのか知りたかった。
「何故……か、私は本当なら暮らしていた里で死ぬはずだった。死を受け入れたの。だけど、この本丸に連れて来られて審神者にと請われて……」
ひゅうがは、本丸に来る前にいた里でのこと、妹のことを順を追って話した。
ひゅうがのような力を持つものが何人もいること、彼女達が一つの里に集まっていることに一期一振は違和感を持ったが、一期一振は今の世では普通のことかもしれないと、あまり深くは考えなかった。
「妹を助けるために審神者になったのもあるけど、それ以上に、誰かに必要とされたかったから。審神者として認められて、必要とされたいって思ったの。だから、私が誰かに必要とされる限り、審神者として力を尽くしたい。それじゃ、だめかな?」
誰かに必要とされたい。
その言葉に一期一振は、自分も同じだと思う。
刀は主がいてこそ、力を振るうことが出来る。
主に必要とされ、主のために力を尽くしたい。
「それではもし……歴史修正主義者との戦いが終わったら?」
戦いが終わったら。
その時、ひゅうがはどうするのか。
戦いの先に彼女は何を求めるのか。
彼女の答えの中に、一期一振の求める答えがあるような気がしたのだ。
しかし、それを聞いた瞬間、ひゅうがから表情が消えた。