第10章 手の温もり一期一振
ひゅうがの秘密の庭。
生垣の中央には東屋が建っており、その東屋を中心にいくつかの作物が実っている。
「ここは一体……」
一期一振が周りを見渡すと、時期ではない作物すら見事に実がなっていた。
ひゅうがの生命を司る力、これら全てが彼女の力によって育てられたものなのだろうか。
「はい、どうぞ」
ひゅうがは一期一振に手のひらを差し出す。
その手には、濃い紫の小さな粒。
昨日、一期一振がまた食べたいと思っていたブルーベリーがのっていた。
「……何故、これを?」
「一期一振、食べたかったのでしょう?本当は」
ひゅうがの言う通りだったか、一期一振はブルーベリーを手に取れなかった。
「……私ね、妹がいるの。だから、妹が欲しがるとついあげちゃうの。喜ぶ顔が見たいから。本当は自分も欲しかったとしても……」
「…………」
「だから、わかっちゃった」
ひゅうがは悪戯っ子のように笑う。
何故、昨日の朝食でひゅうがが一期一振を見ていたのか。
あの時の笑みは、そういうことだったのか。