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神威の巫女【刀剣乱舞】R18

第10章 手の温もり一期一振


「青菜のお浸しと、里芋の煮付けを盛り付けたら、冷やしておいた小鉢に果物を盛り付けてほしい」

歌仙にそう言われ、一期一振は果物が入った籠を見ると、見たことのないそれに一期一振は首を傾げた。

「歌仙殿、果物とはこれでしょうか?一体これは……」

「……あぁ、これかい?ブルーベリーという果物だよ。主から借りた書物に載っていて味が気になってね。昨日、万屋から仕入れてきたんだ」

歌仙はブルーべリーをひと粒摘まむと、一期一振の手に落とす。
濃い紫をした丸い粒がちょこんと手の平に乗せられ、一期一振は困惑した。
これは、このまま食せるのだろうか。
見た目は葡萄のようだが、果たして皮を剥くのか。

一期一振が真剣な面持ちでブルーベリーを見据えていると、堪らず歌仙が吹き出した。

「そのまま、皮ごと食べられるよ」

笑いながら一期一振に教えると、歌仙はブルーベリーを摘まみ、口に入れる。

「口に残るような種もないし、美味しいよ」

一期一振も歌仙にならい、ブルーベリーを口に含む。

「……っ」

小さな粒だというのに、口の中に甘さがいっぱいに広がり、最後にほんのりと酸っぱさがあとを引く。
一期一振は顕現してから様々なものを食してきたが、特に果物の味には驚かされてばかりだ。
どの果物も一期一振の舌を魅了するものばかりだ。

それ故、弟達には表立って言えないが一期一振は食事に出る水菓子を毎日楽しみにしていた。

「……美味しいです。とても」

「そうだろう。きっと、主も喜んで食べてくれるだろうね」

歌仙はひゅうがが喜ぶ姿を想像し、顔を綻ばせた。
その表情を前に、一期一振もつられて笑顔になる。
そして、横目でブルーベリーの入った籠を見る。

さりげなく、もうひと粒を。
そう思ったが、流石にそれは憚られた。
一期一振は朝食でまた食べられるからと心の中で言い聞かし、ブルーベリーを小鉢に盛り付けていった。

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