第10章 手の温もり一期一振
厨に一期一振が着くと、同じく食事当番である歌仙兼定が既に作業に入っていた。
いくつかの鍋が火にかけられ、それらの様子を時折見ては、食材を規則正しい音を立てて切っていく様は見事なものだ。
「歌仙殿、遅くなってしまい申し訳ありません」
「あぁ、今日の当番は一期一振だったね。遅くはないよ、今朝は早起きしてしまってね」
食材を切る手を止め、一期一振の方へ視線をやると歌仙は気にしなくて良いと告げ、再び食材を切り始めた。
「僕はね、料理が得意でね。つい、先に作り始めてしまったのさ」
切った食材を鍋に入れては、また次の食材が歌仙の手によって次々と料理されていく。
「こちらは僕がやるから、盛り付けをお願い出来るかい?」
「はい、わかりました」
歌仙は出来上がった料理を指差しては、どの皿に盛り付けるかも指示していった。